テレビ局の原稿の書き方

2017-11-09

 

新聞社からテレビ局のニュースデスクに出向した当初、原稿の書き方が大きく違うことに戸惑いました。
テレビは映像と音声で理解させます。
ニュース原稿がアナウンサーの声を通して届けられる訳ですから、目で追う新聞記事と違う特徴があります。

 

「聴くだけ」の視聴者もいる

 

私はテレビを見ないで「聴くだけ」の視聴者を考えました。
例えば、テレビを点けながらアナウンサーの声だけ聴いている視聴者。
あるいは、目の不自由な方のため。
聴いて分かる原稿にしていく必要があります。

 

 

「読ませる記事」ではなく「聴いてもらう記事」へ。
新聞記者の習慣が染み込んだ私は、慣れるまで少々、時間が掛かりました。
私なりにテレビ局の原稿の書き方で注意した点を挙げます。

 

同音異義語は誤解される要素

 

同音異義語がいくつかある言葉を使わない。
視聴者に誤解を与えない表現という意味です。

早口言葉に「庭には二羽、鶏がいる」というものがあります。

文章を読むと分かるのですが、聴いてすぐに「主語と述語の関係」が判断できません。
テレビニュースはよどみなく進んでいきます。新聞のように遡って読むことはできません。
視聴者がストレスを感じることなくニュースを理解できるように、
同音異義語がいくつかある言葉を避けてデスク作業をしました。

 

中にはスーパー(字幕)があるから読めるはずだと思う方もいるでしょう。
しかし、先ほども書いたように、「テレビを聴く」視聴者もいるのですから、
音声だけで伝える意識を強くした原稿が求められます。

 

四字熟語は分けて、かみ砕いて

 

四字熟語をできるだけ使わないようにしました。
正確に言うと、四字熟語の中でも「使った方が伝わる」言葉だけは使いました。

四字熟語もいくつかのパターンがあります。構成ですね。
1 前の2字が後の2字によって分かるもの=主客転倒、意気消沈、責任転嫁など
2 2字ずつ同様の漢字を続けているもの=時々刻々、正々堂々など
3 対等な関係の熟語を続けるもの=完全無欠、悪戦苦闘、有名無実など
4 4字が対等な関係で並ぶもの=東西南北、起承転結、喜怒哀楽など
5 数字が入る一式型=二人三脚、一石二鳥など

このうち、4と5は四字熟語を分けることができません。4字でワンセットです。
しかし、1から3までは分けることが可能です。
「主客転倒」という言葉は「本来の関係が逆になった」と変えられます。
「時々刻々」という言葉は「時が過ぎるにつれて」などと変えられます。
テレビ原稿は、耳に入りやすいようにかみ砕く作業が必要です。

 

 

さらに、四字熟語をできるだけ避けたのは「使い古された表現」だからという理由もあります。
ニュース原稿ではなく、VTRからスタジオに降りた時、キャスターが感想を述べる。
そういう時に「まさに一石二鳥ですね」と言う程度なら分かりますが。

 

テレビニュースは「映像ありき」の場合も

 

新聞記事の書き方は「できるだけ文字数を減らす」ことが大切です。
字数(じかず)を減らす。
紙面は限られているため、多くの情報を入れるための考えです。
そのため、漢字が多くなり、四字熟語もかなり使っています。

しかし、テレビニュースの主軸となるのは映像ですから、
時には「映像が先にあって」「その中で使える映像の長さ(尺と言います)が限られる」場合もあります。
臨機応変に原稿をデスクしなけねばならないのですが、
新聞記者だけでなく、テレビ局のニュースデスクを経験したことで「人への伝え方」も変わりました。

セミナーや講演でも、この経験を応用しています。
受講者に示す資料やパワーポイントは「読ませる」方式。
実際に話す言葉は「テレビニュースの原稿」のように、聴いて理解できる言葉を選んでいます。

 

元新聞記者、テレビ局デスク
メディアコンサルタント・荒川岳志

 

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