過疎地域を活性化させる地域FM

2017-04-22

 

自治体の首長からアドバイスを求められ

 

北海道新聞の広尾支局長時代の話です。
当時の町長から、町を元気にするアイデアなどを求められました。
新聞記者は「第三者の目」で町政を監視する立場でもありますが、
町政を一手に引き受ける町長は孤独です。
支局長に新鮮な考えでアドバイスを求めたかったのでしょう。

 

広尾町は襟裳岬(えりもみさき)の東側に位置し、十勝地方の南端です。
かつては国鉄の広尾線が走り、その途中にある「愛国駅」や「幸福駅」は人気でした。
「愛国発幸福行の切符」が爆発的に売れたことでも知られます。

 

しかし、1987年(昭和62年)2月2日、広尾線は廃線となりました。
その後、広尾町は町外から訪れる人が少なくなり、逆に若者が広尾町を出ていくことに。
私が広尾支局長に赴任した時は人口が9000人を切っていました。

 

サンタランドに「FMサンタ」を

 

私は町長に「地域FMを作ってはどうだろうか」と提案しました。
コミュニティFMを聞くことで、町民の絆が深まると考えたのです。

 

広尾町は日本唯一の「サンタランド」です。
ノルウェーのオスロ市から「サンタランド」に認定されました。
そのシンボルとして「大丸山(だいまるやま)森林公園」が整備され、素敵なログハウスも建っています。

 

 

 

広尾町はL字を鏡で映したような(つまりL字と逆向きの)地形で、
端と端の住民はそれほど交流がありません。
その町民たちの心をつなぐシンボルとして、地域FM「FMサンタ」を提案しました。

 

こんな発想でした。
・FMサンタの発信場所は大丸山を使う
・スタジオは大丸山森林公園のログハウス内に設置する
・町民のボランティアで運営する
・小学生や中学生が町内でインタビューする
・お年寄りにもたくさんインタビューする
・FMサンタの放送は週1回でもいい

 

私は週1回でも、町民が心一つにラジオの前で聴き入る姿を想像しました。
放送を楽しみにする。放送された内容を世間話の話題にする。子どもインタビュワーの来訪を待ちわびる。
広尾町の北端から西端までカバーできる放送は、まさに「地域のコミュニティ」にふさわしいでしょう。

 

過疎地域のコミュニケーションに最適な地域FM

 

私の案に当時の町長は乗りました。「次年度に予算を付ける」と言いました。
しかし、私は反対しました。言い出した側の私ですが、このプロジェクトの肝はボランティアです。
町民が本気でやる気でないものを、トップダウンで示しても仕方ありません。
私は町長に対してこう言いました。「気運を高めるように私が町民を説得します」と。

 

その後、集会や飲食店で町民と会うたびに「FMサンタの構想」を話しました。
しかし、町民たちは自らの生活で精一杯だったのでしょう。乗り気になる人はいませんでした。
半年くらい後でしょうか。私は構想を断念すると、町長に伝えました。

 

いまでも残念に思います。テレビの地上波が届きにくいほど「難視聴区域」だからこそ、独自の放送ができたはずだと。
FMサンタが町民の娯楽になれば、その方法がマスコミからも注目され、全国の過疎地域のモデルになったはずだと。
もちろん、開設前から放送開始、子どもたちの奮闘ぶりまで、私は北海道新聞の記事にするつもりでした。

 

私がパブリシティを考える時の基本があります。それは「逆境をプラスに変える発想」です。
全国の過疎の町村で、特にテレビやラジオ放送を視聴しにくい地域こそ、独自の地域FMを楽しむようになれば。
その地域全体だけが楽しむ放送が、他都市からうらやましがられたら、人が移住するきっかけにもなると思うのです。

 

 

 

 

元新聞記者、テレビ局デスク
メディアコンサルタント・荒川岳志

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